しのぶを口づけから解放すると、義勇は彼女を抱き上げて、
「流石にここでは何だろう」
好きな人相手とはいえ、流石に食卓付近ではしのぶも躊躇する。
「お気遣いどうも……」
軽々運ばれるあたり、義勇の力強さは相変わらず健在らしい。
隣室に引かれている布団の上にしのぶを静かに下ろしながら、
「言っておくが、清潔にはしてる」
「……意外にそうですね」
お姉さんの躾の賜物?
敷きっぱなしという感じではない、ちゃんと布団のいい匂いがする。
「意外で悪かったな」
そう言いながらもしのぶの首筋にキスの雨を降らす。
「いき、なり……!」
「止まらんと言ったはずだ」
首筋を責めることを止めることなく、今度は彼女のブラウスのボタンに手をかけ、外していく。
ボタンが一つ、又一つ外されていくのを眺めながら、
「……本当に……義勇さんは変なところで器用ですね」
彼の手が自分に触れる度に軽く電流でも走ったような感覚に陥る。
「隊服よりは脱がしやすい……」
「慣れてるように見えますけど」
「……慣れてない」
「……私だけですか?」
「そうだ」
そう言っているうちにブラウスが開ければ、義勇は彼女の胸にすっと手を伸ばし、二つの膨らみを隠しているブラをずらしていく。
「んぁ……」
軽く触れられてるだけでしのぶは吐息が零れてしまう。
義勇は続いて彼女の胸に舌を這わせ、味わう。器用にブラのホックまで外し、しのぶを露わな姿に変えていく。 次いでスカートの方へと手がいく前にしのぶがその手を止め、
「わ、私だけ脱ぐのはずるいですよ?」
と牽制した。このまま彼に脱がされるのも悪くないとは思うのだが、自分だけ裸はあんまりだ。
恥ずかしいのなら一緒がいい。
そんなしのぶの思いを知ってか知らずか、義勇はすぐさま答えた。
「分かった、俺も直ぐ脱ぐ……」
「あなたは脱がせておいて、私にやらせてくれないんですか」
「……この格好でどうする?」
ジャージ姿の男をどう脱がすかというと確かに難しい気がした。
「そうですけど……」
納得し難いしのぶを残して、義勇は己の衣服をさっさと脱ぐ。
その姿を思わず見惚れてしまうしのぶがいた。
前世でも今でも鍛えてますよね……おまけに脱ぐのも早い……
そんな見覚えのある、けれどはじめての義勇の姿。
ドキドキと胸の鼓動が跳ね上がる。
「お前のは俺が脱がすか?」
彼がそう尋ねると、
「じ、自分で脱ぎます……」
これ以上、裸の義勇に迫られるのではしのぶの心臓が保たない……
尤もこれからそれ以上のことをするわけだが。
そう思いつつ、急いで身につけていた衣服を脱ぎ、自分も裸になった。
恥ずかしさを誤魔化すように、あるいは気になって、しのぶは義勇に尋ねる。
「そ、それにしても義勇さん、ぶっきらぼうですけど、随分話してくれますね」
「……後悔したからな。昔、お前と話さなかったことを。だから今は話すことにした。」
「……義勇さん……」
それはとても嬉しい言葉だった。
ああ、この人を好きになって、愛してよかった。
目線をしのぶに合わせるべく、義勇は屈み込み、
「……怖いか?」
少し震えているしのぶを気遣った一言だった。
「怖くなんて……」
それは嘘だが、本当の気持ちでもある。今、結ばれなくては怖い、怖すぎる。
潤んだ瞳で義勇をしのぶは見つめ、そんな彼女の頬を優しく撫でた。
「止まれんが、善処はする」
「……止まんなくていいです……」
再び、お互いに引かれるままに口づけを交わす。
舌を絡ませ合い、もっと深く求めるように抱き合う。
しのぶのすべてを味わおうとする義勇は彼女の躰をまさぐり、
「ふぁ……っ」
甘い吐息を漏らしながら、彼の愛撫のなすままにしのぶは身を捩る。
触られるだけで幸福に浸れる。
あの日だってそう幸せだったのだ。
思い出されるのはいつかの夜――たった一夜の想い出がフラッシュバックするように思い出される。
「好きです、義勇さん、好きです!」
急に不安を感じてぎゅーっと義勇の頭を抱きしめる。
「し……のぶ」
その力強さに驚きながらも、義勇はたまらない愛おしさを感じた。
同時に温かい雫が零れ、しのぶが泣いていることに気が付いた。決して顔を見せようとはしないが、そのくらいは分かる。
「……泣くな」
「ぎ……ゆう……さん」
優しく彼女の頭を撫でてやる。
「……何ならこのままでもいい。だから泣くな」
一晩でも付き合ってやると義勇が続けると、ほっとしたのだろう、しのぶの力が少し緩んだ。
優しい人……
でもあなたの欲望に火を付けたのは私ですよ?
それなのにこのままでいいとまで言ってくれる。
それが嬉しかった。だから次の言葉は自然と出た。
「……義勇さんを下さい」
「……いいのか?」
漸く義勇に顔を見せ、
「怖くて泣いてるのでも、悲しいから泣いてるわけでもないです。ただ嬉しいんです、あなたとこうしていられることが」
「……そうか」
その一言だけで理解してくれるのが分かり、しのぶにはとても嬉しい。
「だから下さい、あなたを」
「……分かった」
そう言うが早いか、再び彼女の躰をまさぐり、その秘部に指を滑らせる。そこは既に待ちかねているかのように十分潤っていた。
それでも焦ることなく、静かにしのぶの中で指を動かしてなじませていく。少しずつ本数を増やして、彼女に無理をさせないように。
「んふっ」
義勇に触れられる度、吐息を我慢しているのかくぐもった声になる。思うまま声に出すことが恥ずかしい。
やがて十分と思った義勇は己のものをしのぶの秘部にあてがう。その途端、しのぶの躰が硬くなるのを察した。
「あのときと同じだな、力を抜け……しのぶ」
しのぶが願う前に名を呼んでくれた。彼に名を呼ばれるとほっとする。強ばった躰が少し柔らかくなる。
「しのぶ……」
そう言うと義勇はしのぶに口づけを深く求め、彼女の腰を抱いて中へと入り込む。ゆっくりと愛おしむように。
男の侵入に痛みがないわけではなかったが、しのぶはぎゅーと爪を立てて義勇にしがみ付くことで和らげた。
背中に結構な痛みがあったはずだが、顔色も変えず彼は口づけから解放すると、彼女の顔を撫でてやる。
「これで義勇さんは私のものです」
最後まで彼のものが入ったのを確認するようにしのぶはそう言った。
「俺はものじゃないがな。が、そうならお前は俺のものだとうことだな」
「そうとも言いますね」
ああ、満たされる、そうしのぶは思った。
「悪いが、こちらもきついから動くぞ」
「来て下さいっていったのは私です」
「ああ、そうだな」
しのぶの身体を気遣いながら、義勇は彼女の中で暴れゆく。彼女を味わい尽くすという目的の下、自分が触れてない箇所がないように。
一方のしのぶも破瓜の傷みから解放され、義勇からの快楽に身を浸していけば、必死に我慢していた声は我知らず吐息となって吐き出していた。
「ふぁ……!」
義勇は彼女の中にある己のものが今にも爆発しそうになっているのを自覚する。いつでもこうだ、しのぶ相手では余裕などない。
「相変わらずきつい……」
「義勇さんは相変わらず激しいですね……」
以前抱かれた日にも思ったが、行為をしている間、義勇は雄弁になる。それが嬉しかった。
「もっと、もっと下さい……」
にこやかに微笑い、義勇にそう言うと、
「可愛いな、しのぶは……」
義勇もごく自然にそう応えていた。
「え、あ……」
唐突に可愛いと言われ、顔が真っ赤になるのが自分でも分かった。
すごく嬉しくて、照れくさい。
言った方の義勇も照れくさいらしい。
「い、行くぞ」
「え、あ、はい」
しのぶの返答を受けた途端、彼女の腰を持ち上げ、更に攻めゆけば彼がもたらす快楽に翻弄され、義勇の望むままにしのぶはその身を躍らせていた。
そうして止まらない嬌声を上げながら、しのぶはひたすらに義勇を締め付ける。
その声が義勇の耳に届けば、これ以上ないくらいの誘惑であり、止まることなどもう出来なかった。
「悪い……」
「ひぁ」
深く浅く義勇のものがしのぶを責め立て、攻めはより激しくなっていく。自分の下で妖しく乱れる少女が愛おしくて堪らない。
「止まれんと言ったからな」
そうしのぶの耳元で囁き、遠慮など何処へ行ったのか彼女を絶頂へと追いやる。
が、自分自身にも限界が来ており、義勇はしのぶとともに果て、彼女の中へと自分のものを注ぎ込んでいた。
そのまましのぶの元に倒れ、抱きしめる。
互いにどうにも離れづらいから暫くそのままでいた。
が、義勇は一つのことを思い出し、起き上がってしのぶに告げた。
「……今更なんだがな」
「何ですか……」
義勇の放ったものの熱さによいながら、しのぶが尋ねると、
「避妊してないな……」
「あ……」
しのぶも義勇と一緒になりたくて、義勇もしのぶと一緒にいたくて、忘れていた……
「ぎ、義勇さんの子供ならいいですけど……一応、安全日狙いましたし」
けれど家族になった姿を少し想像してみると何となく幸せだった。義勇も同じらしく顔が赤い。
「そ、そうか。だが、せ、責任は取る……必ず」
「えと、責任は取って貰いますけど、嬉しかったです。そこまで夢中で抱いてくれたの」
「俺がお前に逆らえるわけないだろうが」
そう言いながら、布団に寝転がる。理性がぶっ飛んでやりたい放題した自分に少し呆れるが、しのぶを前にしてそれは無理な話だった。
「そうですか?」
「そうだ」
「嬉しいです」
そう言って義勇の胸にすりすりと頭を寄せて、甘える。冷静沈着で何を考えてるか分からない人――最初出逢ったときはそう思っていた。けれどこんなに感情豊かな人なのだ。そしてそれを知っているのは自分だけ。
それはとても嬉しい事実。
義勇はしのぶの頭を撫で、
「少し休め、疲れたろう」
「義勇さんもですよね」
「……まあな」
しのぶと交われたことが嬉しすぎて加減もしてないあたり、どれだけ浮かれていたのかと思う。
だが、あのときと違い、この笑顔が直ぐ消えることはない。
それは義勇をとても安心させた。
ああ、そうか。別れも言えず別れたことは俺にとってきついことだったのだと今更に思う。
本当はもっともっと抱いていたいが、彼女の年を考えてこれ以上は控えるべきだろう。
「もっと抱いてもいいですよ?」
義勇の心を見透かしたようにしのぶが言う。
「お前な……人の涙ぐましい努力を何だと思ってる」
「手を出した事実は変わりませんよ?」
「それは否定しない……ただ今度は慌てないでもお前がいるからな」
それは心からの言葉。だからしのぶもただ、
「……はい」
と答えるしかない。
「ちゃんと傍にいますから……」
「そうしてくれ……」
軽く口づけ、二人はそのまま微睡みに落ちる……互いをしっかり抱きしめたまま――